くレポート〉新しい地産地消の形

〜「View vol.15 2007春号」 農林水産省東海農政局発行〜 より
2007/04/11作成 ![]()
農産物直売施設「おばあちゃんの店」の隣にあるから「まごの店」。全国唯一の高校生が運営するレストランは、三重県多気町の自然休暇村「五桂池ふるさと村」に平成14年に開設され16年にリニューアルされました。
高校生が地域の食材をふんだんに使ったメニューを開発し、レシピもあわせて提供するなど新しい形での地産地消運動が始まっています。
また3月7日には、この一連の取り組みについて全国地産地消優良活動表彰事業の特別賞を受賞しました。地域と高校生の斬新な取り組みをレポートします。
<オフィシャルWebサイト>
相可高校食物調理科
| 午前10時半というのに、レストランは昼食を待つお客さんであふれていた。レストランは三重県相可高校食物調理科調理クラブの運営する「まごの店」。食材の購入、調理、接客、経理…すべてを高校生が行い、数々の全国の料理コンクールで優勝している。 朝礼が始まった。大きな声で「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」挨拶を繰り返し、業務連絡。この瞬間から生徒達の顔が変わった。あどけない普通の高校生が調理師に変わった。 「いらっしゃいませ」接客態度がすがすがしい。ファーストフード店の機械的なマニュアルの繰り返しとは違う自分の言葉があった。「ようこそ私たちの店へ」そんな風に聞こえた。忙しく立ち働く生徒に「どうしてこの学校を選んだの?」と尋ねた。「中学生の頃、このレストランに食事に来て、きびきびと働いている姿を見てあこがれた」何人もがそう答えた。 |
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テーブルには花御膳。天ぷら、出し巻き卵、煮物、和え物等10品以上でたったの千円。いろどり、切り方まで工夫されていた。旬を取り入れた心のこもった料理はおいしい。 「料理は心だ。夢無限大」壁にかかる言葉が生徒達をあたたかく見守っていた。 |
| 指導にあたる村林先生は、平成6年に調理科が創設されたときに声が掛かった。大学で経営学を学んだ後有名調理師学校講師を10年勤めて「同じ教えるなら地元で」と相可高校の教諭に就任して12年たった。自分の技術や知識を全部生徒達に伝えたいという思いは授業だけでは収まりきれなかった。 やる気のある生徒と自らの情熱の受け皿として調理クラブを作った。最初たった6人しか入部しなかったのにガッカリした。それが今では調理コンクールの全国大会常勝校となった。クラブの練習は放課後毎日、営業は土、日、春、夏、冬休み。先生も生徒も休みは定期試験中とお正月だけというハードスケジュール。早朝の市場での仕入れから後片付けまですべて指導する。 営業日には、その日のイベント、天気などで来客数を読み、生徒達で食数と仕入れ量を決める。市場での品物や地元農家の持ち寄り農産物を実際に見てから臨機応変にメニューを決める。この日は230食。ほとんどが昼過ぎには完売するが、時には読み違いも起きる。手分けして店頭で客の呼び込みもする。食べ残しは皆で問題点を議論する。結果は正直で冷徹だ。真剣勝負の世界が展開し、生徒らは日々鍛え上げられる。調理だけではない、接客マナーの一つ一つに心を砕く。 仕入れから調理、接客、後片付けまで、すべてはお客さまの「ごちそうさま」「おいしかった」の一言を聞くためにあることを全員が承知している。 |
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平日は学校の調理室で素材の見極めから使い方、包丁さばきなど基本を繰り返し練習する。 レストランの収益はその材料調達などで消える。経理もすべて生徒が行う。生徒一人一人が地域の食材を使ったオリジナルメニューを次々と開発し、そのいくつかがレストランのメニューに採用される。そのレシピ(写真)はカラー印刷され顔写真と名前付きで店頭やスーパーなど各地に置かれ、お客さんがお好みで持ち帰る。 その怖さと誇らしさのはざまで生徒達が高めあい、食の甲子園を目指す。 |
| きっかけは、平成13年に開催された多気町主催のイベントに、調理クラブの生徒たちが地元産物を使った料理を出したことから。料理のレベルの高さに驚いた町や地域の人たちは、生徒たちの技術をなんとか町の活性化や地産地消活動に活かす方策はないかと考え、「おばあちゃんの店」の前で、屋台の「まごの店」がオープンした。 周囲の不安をよそに「まごの店」は、またたくまに人気の店になり、ふるさと村への入場者の増加とともに、「おばあちゃんの店」の売上げアップ、地域の活性化など様々な波及効果をもたらした。生徒達による「伊勢いも」を繰り込んだ「とろろ麺」の開発から始まった地域の産物を使った商品開発も好評だ。生徒達の創作料理レシピは、漁協や畜産会、大規模小売店や企業との共同プロジェクトに進展している。その一方で、調理場が狭く大人数に対応しきれないということから、町は新しい「まごの店」建設を決定。建設にあたっては、建築科高校生による設計コンペを行い、17年2月、8,900万円をかけた新しい「まごの店」が誕生した。創設以来獲得した賞は150を超す。高校生の「食の甲子園」といわれる大会でも上位を独占した。高校の食物調理科は全国に88校あるがレストランを運営しているのはここだけ。文科省の「目指せスペシャリスト事業」に全国の調理科でただ一つ選ばれ、本年3月には、農林水産省の全国地産地消優良活動表彰事業で特別賞を受賞した(写真)。食だけでなく「地産地消」という地域との密接な連携が評価された。 三重県相可高校「まごの店」、ここには食と教育の原点がある。高校生だけでない地域と一体になった食と農の甲子園がここにある。 |
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