tips87 初めてのRAW現像(Lightroomの秘密)

    

 「液晶モニタで再現される色調や彩度を、プリンタで出力したい」
 パソコンで写真編集を行うものにとって切なる願いである。

 RAW現像が普及している今、あらためてこの問題を取り上げ、筆者自身の“紆余曲折”様々な経験も織り交ぜて、数回にわたり検証を・・・としていた矢先に
 今度は
「Lightroomで現像した後にElementsでWeb保存したが、その画像をWindowsビュアーやブラウザ(Internet Explorer)で見ると色が違うのは何故か?」との質問をいただいた。
 かねてよりLightroomのカラーマネジメントについては、少々気になっていたところであるだけに、まさにタイムリー。
 RAW現像とりわけLightroomを使用するものにとって避けては通れない重要な事柄。今回は、一部予定を変更して、その秘密を紐解いてみたい。


<Lightroomとは>
 正式には「Adobe PhotoShop Lightroom(以下、Lightroomと表記)」という名称で、PhotoShopとは全く別にカメラマンのために新規に開発されたソフトで、画像管理・現像・プリント・PDFやWebでのプレゼンテーションなど、カメラマンの基本業務に特化した、誰にでも使える容易な操作を実現した、いわゆるプロ御用達のソフトである。
 LightroomではRAWデータだけでなく、レタッチのたびに画像情報がどんどん削られていくJEPGファイルでも、RAWファイル同様にほとんど劣化なく現像処理(一部制限あり)が出来ることから、初心者も含めJEPGを多用するカメラマンも恩恵をもたらしてくれるため、多くのカメラマンに支持されている。

 多分に漏れず筆者も愛用者のその一人。Lightroomでは専ら画像管理・現像処理・Web出力を、プリント出力並びにJEPGファイル化については、PhotoShopCS3に転送して処理を行っている。


 Lightroomは、大きく5つ(ライブラリ、現像、スライドショー、印刷、Web)のモジュール(ひとまとまりの機能単位)で構成され、すべて1つのウインドウで作業が行えるようになっているため、ノートPCなどの狭い画面でも比較的使いやすくなっている。
 おまけに、これ1本で画像読み込みから保存、画像管理、現像、スライドショー、印刷、Webコンテンツ作成やDVDまで焼くことが出来るうえ、PhotoShopCS3にくらべ約1/4の安価であることが何より魅力的。導入する価値は十分にあるといえる。
<Lightroom 現像モジュール画面>

 詳しくは tips83 初めてのデジタル一眼(RAW現像/PhotoShop Lightoom編)から


<カラーマネジメントのおさらい>
 一口で言うならば、スキャナ、デジカメ、プリンタなど異なるハードウェアの色領域を近付けるための管理システムのこと。また、ハードウェアは常に一定の状態を保つ事が重要で、経年変化や当初から持っている個体差、また設置場所の環境などより(同じモデルの機器でも)違い出てくるために、常に初期状態(工場出荷時)に戻すように調整(キャリブレーション)することが求められる。
 デジタルデータは、カラースペースという数値で管理されており、機器に依存しないカラースペースを仲介するのが色特性情報を持った「プロファイル」であり、予めシステムにインストールされているもの、(プリンタを購入し)プリントドライバ等と同時に時にインストールされるものなど様々。
 なお、モニタやプリンタなど機器固有の色差を正確に補正するためには、専用のプロファイル作成ツール(モニタキャリブレーションツールやプリンタキャリブレーションツールなど)を使って作成しなければならない。


<Lightroomのカラーマネジメント>
 Adobeによれば・・・
 「Lightroom では、写真ワークフローにおけるカラーマネジメントを簡単に実現できます。(中略)Lightroom の内部で色がどのように管理されているのか詳しく理解する必要はありませんが、次の情報を知っておくと、ワークフローでの処理に役立つ場合があります。(中略)
 写真ワークフローで利用される各種デバイスの色域はそれぞれに異なり、各デバイスは所定範囲内の色で写真を記録、保存、編集、出力します。カラープロファイルにはカラースペースが定義されており、この情報に基づいて Lightroom で写真内の色が適切に管理および変換されます。(中略)

 RAW ファイルに対しては、現像モジュールでは「ProPhotoRGB」カラースペースのカラー値に基づく広いカラースペースが使用されます。「ProPhotoRGB」では、カメラで撮影可能な大半の色を再現できます。(中略)
 ライブラリモジュールでは、プレビューが「AdobeRGB」カラースペースで保存されます。(中略)
 Lightroomで写真をプリントする際に、使用するプリンタ、用紙、インクのカラースペースに極力一致するように、必要に応じて写真の色を変換することができます。プリンタのカラープロファイルの使用方法については、プリントのカラーマネジメントの設定を参照してください。
 Lightroom のスライドショーモジュールと Web モジュールでは、画像が「sRGB」プロファイルを使用して自動的に書き出されるため、大半のコンピュータのモニタで色がきれいに出力されます」 とアナウンスメントされている。
 
 お世辞にも「分かりました」というには程遠いような難解な説明で・・・(汗)
 それはさておき、この文中にとても重要な秘密が書かれているということが(度々の実験で)おぼろげながらにも分かってきたのである。


<カラースペースの秘密>
 事細かく説明するには紙面が足りないので、ここではズバリ本論を並べてみたい。
 (全てが理解出来なくとも「こういう仕様なんだ」という風に、理解していただければ十分である)

◆ライブラリモジュール
 RAWファイルを読み込むと同時に表示されるサムネイル画像(縮小画像)は、読み込み終了と同時に順次表示が変わっていく。
 これは、最初に表示されているサムネイル画像は、カメラ本体でプレビューされる画像を読み込んでいる模様で、その後、Lightroomのデフォルト(標準的な予備現像の値)値に変換されていく。(ライブラリモジュールでは、プレビューが「AdobeRGB」カラースペースで保存される)

◆現像モジュール
 「ProPhotoRGB」と呼ばれ「“AdobeRGB”よりももっと広いとされる」Kodakの提唱するカラースペースが使用されている。
 理由はともかくも「カメラで撮影可能な大半の色を再現できる最大限のカラースペース」を採用しているのだという理解で良い。
 (AdobeRGBも含め)このカラースペースの違いが、ブラウザなどでの表示の際に「色が違う」という原因になるのである。

◆印刷モジュール
 「使用するプリンタ、用紙、インクのカラースペースに極力一致するように、必要に応じて写真の色を変換することができる」については、基本的には、プリンタのカラープロファイルに委ねられるという意味であろう。
 筆者自身、プリンタカラーマネジメントシステムでカラープロファイルを作成。印刷時にこのプロファイルを使用して印刷しており、モニタで再現される色調や彩度が、(印刷出力されたプリントで)ほぼ実現出来ていることからも裏づけ出来る。
 (プリンタカラーマネジメントシステムがない場合)には、印刷用紙毎に提供されているiccプロファイルを使用していただくのが一般的である。

◆スライドショーとWebモジュール
 スライドショーやWebギャラリーを作成する場合、出力される画像は「sRGB」プロファイルを使用して自動的に書き出される。
 これは、一部の超高級モニタ(AdobeRGBが表示されるモニタなど)を除き、大半が使用するコンピュータのモニタでは「sRGB」でしか表示できないないために、これを想定しての仕様となっているようである。
 
「“ProPhotoRGB”と“sRGB”とは違うではないのか?」という声が聞こえてきそうであるが・・・(汗)
 現像は、「カメラで撮影可能な大半の色を再現できる最大限のカラースペース(ProPhotoRGB)」で行い、「sRGB」のカラースペースを最大限生かして(Lightroomが自動的に「ProPhotoRGB」カラースペースから)写真の色を適切に変換して、スライドショーやWebギャラリーを作成してくれているというふうに理解するのが自然である。

 以上のように、Lightroomでは(いわゆる)モジュールごとにカラースペースが使い分けられているのである。


<色が違うのは?>
 その前に、ソフト間でのファイルの受渡しについて、説明しておかなければならない。

 質問者は、Lightroomで現像処理を行った後、現像モジュールから(所有する)PhotoShop Elements(以下、Elementsと表記)での編集を選び、自動出力(Lightroonで出力するファイルが選択可能)されるpsd(PhotoShop形式のファイルで拡張子が「.psd」)ファイルをElementsで開いている。そして、Web保存でJEPGファイルに保存するのであるが、
「ElementsやLightroomで表示されている時には透明感のある黄色の色調であったのに(Web保存でJEPGファイルに保存した画像を開いて見ると)やや赤みの帯びた黄色に見える」というのである。

 詳しく経過を追ってみると、Lightroomから出力されるpsd形式のファイル(Lightroomの環境設定メニューで「DNG」「JEPG」「TIFF」「PSD」の4つのファイル形式が選択できる)に埋め込まれたプロファイルは「ProPhotoRGB」で、「sRGB」ではなかった。
 次に、「Web保存でJEPGファイル」に保存するのであるが、(Elementsには)PhotoShopなどとは違って「ICCプロファイル」を埋め込んだ形でのJEPG保存が出来ない。言い換えれば、Web保存されたJEPGファイルには「ICCプロファイル」は埋め込まれていないということになる。結論として、今回の疑問点については、カラースペースの違いによる問題ではなかったことが判明した。
 
 実際、「Web保存された画像をブラウザで開いたものと、Elements上で開いたPSDファイルとを見比べてみて」の単純比較であるためかなり主観が入っている感は否めないが、参考までに同様のテストを行い、両者を同一モニタ上に表示させたものを画面コピー、リサイズしてファイル化した結果を以下に添付させていただく。(テストではElementsではなく、PhotoShopCS3を使用した)
 最初の画像は、左側がブラウザでの表示、右側がPhotoShopCS3での表示。次の画像は、同じ画像を左右入れ替えて保存したもの。
 ご覧いただく側のモニタによっても結果は違うと思うが、さて・・・

【単純目視比較表示テスト結果】

 ・FlexScanL997
(モニタキャリブレーション有り) 左右を入れ替えても常に左側が濃く見えるため、両者の差異は見られない
 ・Diamondcrysta RD1712VM(モニタキャリブレーション無し) 上の画像と比較して、(下の)両画像の差異は上ほど極端ではないものの、若干ブラウザ表示のほうが濃く見える
 ・Epson NJ5100pro(ノートPC付属のモニタ)(モニタキャリブレーション有り) RD1712VMほど明確には分からないもののブラウザ表示のほうが微妙に濃く見えなくもない
 ・VersaPro VY17F/EX-U(ノートPC付属のモニタ)(モニタキャリブレーション無し) 残念ながら、両者の違いが分からない(汗)
 ※閲覧するモニタによって(モニタキャリブレーションの有無に関係なく)見え方はまちまち、まぁそういうものだという理解でよろしいのではと(笑)

<ブラウザで開いたJEPG画像> <PhotoShopCS3で開いたPSD画像>
<PhotoShopCS3で開いたPSD画像> <ブラウザで開いたJEPG画像>


<プロファイルが原因の「色が違う・・・のは?」>
 (前述の)事実解明テストの経過で、プロファイルに起因する問題点が明らかとなったので、ぜひご紹介しておきたい。

【テストの概要】
 前述のテストと同様に、Lightroom(現像モジュール)から外部編集を選んでPhotoShopCS3にTIFFファイルを仲介してファイルを受け渡し、それぞれ(ProPhtoRGB、AdobeRGB、ProPhtoRGBプロファイルをsRGBに変換した3種類の)カラープロファイルを埋め込んでJEPGファイルとして保存した。
<作業環境>
・NANAO FlexScan L997(モニタキャリブレーション有り)
ColorVision Spyder2PRO(モニタキャリブレーションツール)
・PhotoShopCS3、Adobe LightRoom1.3

・intel Core 2 Quad Q6700 /2.66GHz /1066MHz FSB 、PC6400 2048MB DDR2-SDRAM
・intel P35 Expressマザーボード 、 SerialATAII /7200rpm 500GB×2 、 nVIDIA GeForce 8600GTS /256MB
・Plextor DL対応 DVDスーパーマルチ
・Microsoft Windows XP Professional SP2

1. 3種類のファイルをWindows(画像とFAX)ビューアで瞬時に切替て目視比較
 「sRGB」と「AdobeRGB」のカラープロファイルを埋め込んだ画像はまったく差異は見られないが、両者に比べ「ProPhotoRGB」カラープロファイルを埋め込んだものはややくすんで見える
2. 3種類のファイルをPhotoShopCS3で開いて、並べての目視比較
 1.と同様に、「sRGB」と「AdobeRGB」のカラープロファイルを埋め込んだ画像には、まったく差異は見られないが、両者に比べ「ProPhotoRGB」カラープロファイルを埋め込んだものはややくすんで見える
 
※さて、皆さんのモニタではどのように映りますやら・・・(汗)
<ProPhotoRGBをsRGBに変換> <AdobeRGBカラースペースを埋め込んだもの> <ProPhotoRGBカラースペースを埋め込んだもの>

 
「何が?どこが?違うのか・・・」
 結論から申し上げると、「sRGB」しか表示できないモニタでも、LightroomやPhotoShop、Elementsでは、「ProPhotoRGB」や「AdobeRGB」のカラースペースを擬似的にを表現することが出来るが、「sRGB」しか表示できないWindowsビューアやインターネットエクスプローラ(IE)などのブラウザで(Web保存の際に「ProPhotoRGB」や「AdobeRGB」のICCプロファイルを埋めたまま保存したJEPGファイルを)表示した場合、ややくすんだように見えるといわれている。
 事実、今回のテストでも、最もカラースペースの広いとされる「ProPhotoRGB」のICCプロファイルを埋め込んだファイルは、確かにややくすんだように見えた。しかし、sRGBとAdobeRGBのカラープロファイルを埋め込んだ画像にはまったく差異は見られなかったのは意外であった。
 
参考Webサイト http://aska-sg.net/pstips/tips/pages/color-profile_jpeg-hozon.html

 「・・・では、解決策はないのか?」
 Lightroomについてはカラーマネジメントのところで述べたように、カメラで撮影可能な大半の色を再現できる「ProPhotoRGB」で現像を行い、「sRGB」のカラースペースを最大限生かして(Lightroomが自動的に「ProPhotoRGB」カラースペースから)写真の色を適切に変換してスライドショーやWebギャラリーを作成してくれるため、色調などが大きく違っては見えない。
 PhotoShopについても、読み込まれた画像に埋め込まれたプロファイルが「ProPhotoRGB」や「AdobeRGB」のファイルであっても、プロファイル変換(イメージ→モード→プロファイル変換)メニューから強制的に「sRGB」に変換することで(後にWeb保存でJEPGファイルに保存した画像と比較しても)差異が見えにくくなる。
 残念ながら、Elementsについては変換させる機能が搭載されていないので、Elements自体では如何ともしがたいが、LightroomからのスライドショーやWebギャラリーを利用して、保存されたJEPG画像をお使いいただく形もひとつの方法ではなかろうか。

 
「・・・それなら最初からsRGBで撮影すればいいではないか!」
 (ここまでの経過を見れば)そういわれるのはごもっともなれど・・・、「sRGB」より広いカラースペースを持つ「AdobeRGB」のほうが勝っているのは事実。
 LightroomやPhotoShop上では(sRGBしか表示できないモニタ環境でも)そのカラースペースを擬似的にを表現(表示してくれる)出来るので、そのまま(AdobeRGB色空間のまま)印刷出力すれば、プリンタでAdobeRGB色空間を再現すること(最近の高画質プリンタなど)が出来るなど、可能性を秘めた「AdobeRGB」の魅力は捨てきれないと思うのだが、いかがであろうか。
 最終的に選択権はカメラマンにあるので、ご自身でお決めいただければよい。


<名誉のために・・・>
 いかにも「ProPhotoRGB」や「AdobeRGB」が悪役のように捕らえられがちであるので、あえて申し上げておきたい。
 次回のtips88 初めてのRAW現像(ノートパソコン編)<予定>と後先して、結論めいたことになるのでいささか楽しみが半減しないでもないが・・・(汗)
 一口に、表示されるモニタといってもの千差万別、多種多様。(「AdobeRGB」カラースペースが表示できるモニタは別として)「sRGB」しか表示できないモニタであっても、高画質モニタとノートパソコンのモニタを比べるのは酷である。
 前述の「色が違うのは?」においても、高画質モニタ(筆者のNANAO L997)を使用して色調・比較テストを行った際には、事実、違いは見られず忠実に再現されていた。
 ところが・・・である。
 他の外付けモニタでは、僅かな違いが見られたり、ノートパソコンに付属するモニタに至っては、それこそ千差万別。大きく違いが分かるものもあれば、僅かな違いしか見られないものもあった。

 あえて結論めいたことを申し上げるかもしれないが、Webページなどに掲出する場合、(不特定多数を相手にするわけであるから)閲覧者のパソコン環境を限定することは出来ない。自分と同じように見てもらおうということ自体が無理なのであり、Webページでの閲覧を想定する場合、その点を割り引いて考える必要がある。
 それよりも「(WebでしかもJEPGファイルを公開するのに)そこまでこだわる意味があるのであろうか・・・」
 最終的に判断いただくのはご自身だという言葉を添えて・・・。
<静止画のスペシャリスト FlexScan L997>


<おわりに>
 使えば使うほど疑問もたくさん沸いてくる(笑)
 手間隙かけて作られただけに、秘密?も多いのかもしれないが(汗)
 筆者がこれまでWebで画像を公開する場合、(現像は勿論)画像のリサイズなど様々な行程を経てようやく公開に漕ぎつけてきた。美しく載せるがゆえに結構手間のかかるものである。
 しかし、(最近まで知らなかったのであるが)LightroomのWeb出力を利用すれば、いとも簡単・便利、かつ素早く(Webギャラリーが)出来るのである。まさに目から鱗、もはやLightroomでのWebギャラリー作成の虜になってしまいそうである。
 但し、ファイル容量も(HTMLでの作成に比べ)半端ではないのであるが・・・(汗)

<HTMLで作成したWebギャラリー> <Lightroomで作成したWebギャラリー>


 日頃、当たり前のように使ってはいるから分からぬのかもしれないが、PhotoShopCS3でRAW現像することすらも無くなったことを考えれば、その実力が分かろうというもの。
 昔、撮影したRAW画像がLightRoomによって鮮やかに蘇る様は感動もの、機会があれば、ぜひ一度ご体験いただきたいものである。